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内藤小十郎は、嘉納葵に肩を貸してやり石段を降りて、暖簾を掲げた掛茶屋が並ぶ通りにでる、そのうちの一軒の掛茶屋に入っていく。
「まだ痛みますか?」
「いいえ、不思議なぐらい痛みは消え失せました。ありがとうございます。」
「いゃあ、それは良かった。」
「内藤様は、神の手を使いなさいますか?」
「いゃ、神の手ではないでしょう。わたしは医者ですから」
店の奥から前掛けをした小女が出てきて、お茶を置いて。
「何になさいますか、」
「あぁ、餅を」
「わたくしもお餅をください」
店の小女は会釈をし奥へと引っ込む。
嘉納葵のお茶碗を持つ仕草が可憐で美しい、と小十郎は見とれていた。
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