思龍

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そして、増田屋に戻った小十郎は手桶を置いて。 「お糸、ここに置いとくぞ」 「お帰りなさいまし内藤様。ずいぶん遠出しましたね、」(笑) 小十郎は、苦笑いして二階へとあがっていく。 しばらくして、番頭の吉が戻ってくる。 お糸は、手桶を持ち中庭を抜けて奥の客間に行き、勝安芳を迎える準備をしていた。 勝安芳は、一人で増田屋にやってくる。 勝手を知ってる勝は奥座敷に向かう。 「お帰りなさいまし旦那様。またお一人で京を歩きなさって、あれほど危のうございますと申したのに、」 「わしは大丈夫さ」 「誰か御付きの者をいらっしゃいませんか?」 「わしが出かけると申すと二、三人がぞろぞろと着いてくるのが嫌での、内緒で来ておる。」 「それにしても、あの事件以来、物騒な街になりました。」 **
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