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お糸がいうあの事件とは、蛤御門の変である。
それ以来、長州人や土州人を見たら、見廻り組と新撰組は、容赦なく斬り殺していた。
とくに新撰組は、怪しいと思う者は、容赦なく斬り殺していった。
それゆえ京人は、とくに新撰組を嫌っていた。
長州びいきが多いのである。
「旦那様。いい人がいます、剣術は居合を使いなさるお人どす、その気がおありならわたくしにお任せください。」
「ほぅ居合術とな、お糸に任せる。」
「はい、あとでお引き合わせします。」
お糸は、勝安芳の妾であった。二十を二つ過ぎたころに勝に見初められて今に至る。
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