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それから、三日が過ぎて、葵との約束の日がやってくる。
小十郎は、未の刻が待ちきれずに、早めに、音羽の滝に出かけて行った。
音羽の滝の前の、掛茶屋に入って行き、小女がお茶を持って来て、
「あのときの、お武家様。お餅でよろしいでしょうか。」
「あぁ…」
小十郎はまともに返事せず、頷いただけであった。
どことなく落ち着きがない自分に苦笑した。
こんな気持ちになったのは、なん年ぶりかと思っていた。
音羽の滝に、人影が見えると、ついつい見てしまう。
もう若くない小十郎でも、異性に惚れてしまうと、こんな行動をとるのである。
恋は年齢に関係なく、ふっとやってくるものであろうか?
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