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途中、小十郎が疲労で指先が動かなくなってしまう。
その手を葵が揉んでやる。
さらに、縫いはじめる。
そうやって、何度も繰り返す。
ついに縫い終わり、小十郎は傷口に手を翳していく。全身に包帯を施し終わったときには、手術開始後、二刻を経っていた。
伊藤俊輔は、神の手のおかげか奇跡的に一命をとりとめていた。
小十郎は、二階にあがり、疲労困憊で、床に入るなり寝てしまった。
葵と以蔵は、手術の後片付けをして、自分の床へと戻っていく。
翌日、この出来事は、桂小五郎の耳にはいる。
使いを走らせて、嘉納小十郎に会いたいと、
この時期、人材が欲しかった。
長州藩に人材を集めようとする点で、桂小五郎ほど熱心な男はいなかった。
緒方洪庵塾の出身の蘭学者、村田蔵六を、懸命に口説いて、藩に仕官させたのもこの桂小五郎であった。
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