長州の景

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岡田以蔵が座るなり、 「どうでした」 「嘉納殿は、なかなかの人物とみた。」 「いいぇ、となりの葵どののことですよ。」 「うーん、なかなかの美人であるな。」 「そうでしょう。京でも二人といない美人である。」 「やめとけ、君が手に逐えるお人ではない。しかも、小十郎殿にぞっこんとみた。」 「そうでしょうか?」 「ところで、京の武市半平太が、君の身代わりを見つけたようである。」 「すてたもの、」 「しかも、人斬り以蔵を名乗っているようだ。」 「しれたもの、」 「どうかね、このさい、改名したら、」 桂小五郎は、筆をとり、名前を書いて、岡田以蔵に見せた。 そこには、,,岡本竜之助,, と書いてあった。 岡田以蔵は、笑って。 「桂さん、どこかで聞いた名前ですね。遊んでいませんか、」 「わかってしまったか、」 「そりゃ、わかりますとも、」 その名前は、同じ土州人の坂本龍馬の字をとったものであるから、岡田以蔵は、笑ったのである。 **
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