長崎恋唄 *

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高杉晋作率いる、長州艦隊の軍艦、オテントサマ号の機関長をしている。 その田中顕助を案内させるとは、桂小五郎は、それだけ嘉納小十郎を大事と思ったのであろう。 小十郎たちが船着き場に行くと、庚申丸(こうしん)が停泊していた。 庚申丸から、荷を降ろしているようであった。 その荷を役人が調べていた。 「田中さん、あの黒い物はなんですか?」 小十郎は、珍しいものを見て聞いた。 「あれは、五平太(ごへいた)です。」 五平太とは、人の名前ではない。石炭のことで、北九州で初めて石炭を掘り出した男の名が、五平太、だった為皆そう呼んでいた。 「あれが、五平太でしたか、」 「軍艦、オテントサマ号(蒸気船)の燃料にします。」 「燃料ね、そうですか、てっきり薪で釜を燃くのか、と思いました。」 「通常、運航するだけなら、薪で燃くのですが、何分火力が弱く、いざっというときは、五平太を使います。」 ***
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