11人が本棚に入れています
本棚に追加
ある日、内藤小十郎は、水をもらいに一階に降りてくる。
醤油を買いにお女中が板張りの床に座っているのを見て、小十郎は呆然と立ち尽くす。
「美しい」
小十郎は、背後から肩を叩かれ、
「どうなされました、内藤様。」
奥の間から出てきたお糸であった。
慌てた小十郎は、
「いゃあ、その…」
お糸は、にゃっと笑って、
「あの奥方が気になるのでしょうか?」
「まぁ…その…」
「あの美しさだから、殿方が呆然とするのもわかります。」
「あの方は…」
「はい、本国寺の水戸藩、嘉納葵様というお方どす。」
「ふぅーん、嘉納葵(かのうあおい)様ですか」
**
最初のコメントを投稿しよう!