思龍

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ある日、内藤小十郎は、水をもらいに一階に降りてくる。 醤油を買いにお女中が板張りの床に座っているのを見て、小十郎は呆然と立ち尽くす。 「美しい」 小十郎は、背後から肩を叩かれ、 「どうなされました、内藤様。」 奥の間から出てきたお糸であった。 慌てた小十郎は、 「いゃあ、その…」 お糸は、にゃっと笑って、 「あの奥方が気になるのでしょうか?」 「まぁ…その…」 「あの美しさだから、殿方が呆然とするのもわかります。」 「あの方は…」 「はい、本国寺の水戸藩、嘉納葵様というお方どす。」 「ふぅーん、嘉納葵(かのうあおい)様ですか」 **
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