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相談後、平凡くんに言われた通り、片山くんを探したのだが、一向に見つからない。
ようやく見つけた時には手に指で何かを何度も書いている様子。不思議な行動に首を傾げたものだが、言葉を掛けないことには始まらない。
「片山くん……す、少し、よいだろうか?」
とはいえ、相手はオタクの我でも知る人気者。意識せずとも緊張するのは仕方がないであろう。
「す、す、す、す、す」
「す……?」
しかし、緊張も少しではあるものの解れる。何か壊れかけたような言葉が返ってきて首を傾げて聞き返すことしかできなかったからだ。
「好きだ!」
かと思えばいきなりの告白。少し解れた緊張が巻き戻ってくるのがわかる。
「へ……?え?」
「あああああ………ええと………」
聞き間違えでは?とは思うものの片山くんの動揺を目に嘘ではないと感じた。
「う……つ、付き合うということならば付き合ってみるが……」
だが、動揺しているのは片山くんだけではない。我もだ。
「ま、待ってくれ!オタクくん!お、俺早まって………って、え?いいのか?」
「か、片山くんが、我をストーカーしてたのを知っているんだ……。でも、我は、片山くんが好きかはわからない……だから……」
動揺しすぎにも程があると思ってしまった。ストーカーにストーカーされてるのを知っているだなんて普通は言うべきじゃない。だが、とにかく動揺していたのだ。
「お、お試しでいい!絶対惚れさせるから!」
「う、うむ……楽しみにしている……。」
必死な様子にストーカーはあまり気にしてないのかとは思ったが、やはりいい気はしないだろうと片山くんへ精一杯の誠意を込めた返事をする。
「お、お試しの間お昼一緒にだめですか!?」
その後の突然の提案には驚くものの、お試しとはいえ、付き合うならお昼は一緒にするべきだろうと考える。
「ど、どこで食べるのだ……?」
「お、屋上とか……」
承知のつもりで場所を問えば、片山くんの言う場所に胸が高鳴った。
「屋上行けるのか!?」
「え?ああ」
「行ってみたかったのだ!ピクニックみたいだな!片山くんのお弁当もつくって来るから楽しみにしていたまえ!」
「え、待って……」
漫画などを読んで憧れていた屋上に反応し、とんでもないことを言ったことに我はしばらく気がつかなかった。
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