うみとみう。

3/4
前へ
/8ページ
次へ
「美雨」 何回も聞いたその声は、ゆっくりと開かれた口から優しく私の耳へ辿りついて。 「海」 私も自然と、名前を呼んでいた。 「私ね、海が来てくれるって信じてた。だからずっと、待ってた」 おおきな身体が、それの倍の大きさの影とともに私に向かってくる。 そして目の前が一瞬暗くなって、私のすべてが暖かさに包まれた。 「なんで泣いてんの?」 あ、ほんとだ。私の頬にはいつの間にか暖かい涙が流れていた。 それを、海のしなやかな手がそっとすくう。 海の、海のくせに薄茶色の綺麗な瞳が、揺れることなく私を見つめてきた。私も負けじと海を見つめ返す。 「海は、広くて大きいね」 「どっちの海?」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加