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『三番線に 急行 ××行きの電車が 十両編成で参ります。危ないですので 黄色い線の内側に下がって お待ちくださいーー』
「なぁんか、最近は物騒なこと多いよなー……。ニュース見れば絶対に誰か死んでるし」
早朝、通勤ラッシュの時刻。
俺こと縢真治(かがりしんじ)は、ちょうど黄色い線の内側、電車を待つ列の一番前にてスマホを弄っていた。俺の発言から察せられると思うけど、見ているのはニュースである。まぁ、事件欄しか見ませんけどね。
「んーっと、今日の記事は……っと」
ニュースのまとめサイトを下にスクロールしていく。
お、あったあった。
「んー、事故? ……えーっと、天城八代(17)がトラックに轢かれそうだった子供を助けて自分は轢かれた? うーむ、良いことをしたんだろうが……自分が死んだら元も子もなくねぇか?」
そのように俺は、いつも通りに事件を批判する。傲慢かもしれない。が、人の死について考えることは決して間違っていないと、俺は信じている。今時、そして平和ボケした日本という国家に生きている者として、そうやって「死」の存在を錯覚であっても身近に感じていたい。俺には人を救う力なんてないしね。
「しかも同年代だし……。俺にはこんなこと、できんなぁ。俺はまだ死にたくないっ」
まだやり残したことはいっぱいある、と思う。多分いっぱいある。あるよね?
視線を線路にやると、俺の待つ電車がホームに滑り込んでくるところだった。
「ふっふー、今日は遅刻しませんよー! 何せいつもより一時間も早く家を出たんだからな!」
遅刻魔(重症)の発言は。
そこで
終わった。
ドンッ
「……えっ?」
身体が宙に放り出される。
電車は俺の目の前に。
キィィィィィィイイイイイギャリギャリギャリギャリギャリ!!
迫り来る巨体がその身にブレーキをかけるがもう遅い。
結果は、残酷すぎるほどに、簡潔だった。
ゴッッッ!
鈍い音がして。
そこで俺の意識は、身体とともに吹き飛んだ。
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