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「おはようございます」
『おはよーございまーす』
今日も元気な子ども達の声が園舎に響く。
うん。いいご挨拶。
なんか、いいコトあるかもしれないな……なんて、つい顔が緩みそうになったその時、ガラリと教室のドアを開けて1人の園児が入ってきた。
「おはよう!蒼麒くん!」
「……………………」
返事無しかい?!
……って、まぁ。いつもの事なんだけど。
「蒼くん。おはようございますってちゃんとアイサツしなきゃダメだよ。アイサツはコミュニケーションの基本中の基本なんだからね?」
……黙り込んだままの蒼麒くんの腕を軽く掴んで、子供のクセに朝から説教じみた物言いをするのは、彼のお友だちの紅音くん。
幼稚園児のはずなのにメチャクチャ頭の良い彼は、日本に生まれていなければ、既に飛び級してココには居ないだろうという逸材。
誰とでも仲良しな紅音くんだけど、いつも一緒にいるのは蒼麒くん。
寡黙で無表情。まるで子供らしくない蒼麒くんとは何故か気が合うらしい。
そんななか、ドタバタと廊下を走る音がして、見るからに利発そうな子供がこちらへと走って来る。
「蒼さん!お弁当忘れちゃだめじゃん!ハイ、コレ。じぃやから預かってきた。残さず食べなさいって!じゃ、オレ教室帰るから。しつれーしましたー」
ドアを開けて、蒼麒くんにお弁当を渡して、挨拶も颯爽としてから去っていく彼…。
あの子は、1つ年下のクラス…ばら組の紫峰くん。
去年のバレンタインに、クラスの女子全員からチョコレートを貰ったっていうスゴイ伝説の持ち主だ。
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