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『だからっ!誤解だってばぁ!』
『無理して食べてくれなくて結構です!』
『そんなこと言ってないのに…』
『もー、いいっ!どーせ、気に入らないって言うんでしょ?蒼麒の好きなヤツにしたらいいじゃん!俺は実家に帰らせていただきますっ!!』
「………………って、タンカ切って出てきちゃったの?」
黄色いお花のプリントされた大きなマグカップに注がれた、あったかーいココアの湯気をアゴにあてながら……和輝はコクリと頷いた。
夜半、突然訪問してきた大好きな幼なじみは、今、リビングに置かれたコタツにすっぽり嵌っている状態だ。
新年になったのを期に奥山の家を出た若い夫婦は、ラブラブな2人きりの生活をスタートさせたばっかりだったはずなのに。
黙ったまま言葉1つ発してこないから、しかたなく、そこんちの旦那さんにコッソリ電話をかけて事情を聞いてみれば…。
「ケンカの原因………『玉子焼きの味付け』なんだって?」
そのワードを発した瞬間。
コタツの向かい側に座る俺をジロリと睨みつけてきた彼の眼光に『あわわ…』と、少しだけたじろいた。
あー……逆鱗に触れちゃったかなぁ…なんて思いながら、コタツの上の籐のカゴに入ってる山盛りのミカンをソーッと1つ手に取ると、その視線から逃れるようにして皮を剥いていく。
付けっぱなしのテレビからは、お笑い芸人さんがたくさん出演してる新年らしい賑やかな番組が放送されているけど、その明るさは全くココには反映出来ていない。
自分の家なのに、なんだか居心地が良くないなんて変な話なんだけど……その場を紛らわす為に手を出したミカンの房をひとつひとつ綺麗に外してテーブルに並べながらチラリと様子を伺えば、さっきまでの威圧感は何処へやら……彼は今にも泣き出しそうな顔で俯いていた。
「……和。それはさぁ……仕方の無い事だと思うよ?」
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