新婚さんにありがちな日常(?)

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だけど、和がそれを作ってくれたことが嬉しくて…でも何て言ったらいいのか分からなくて……蒼ちゃんだって、きっとパニックだったに違いない。 「ねぇ、和。蒼ちゃんは、嬉しかったんじゃないかな」 和の隣に移動して、彼の髪を撫でながら語りかける。 「………え?」 上げた白い顔は悲壮感漂うもので……ああ、おめめがウサギさんみたいになっちゃってるよ。 そんな自信なさ気な和に、目いっぱいの笑顔で答えてあげる。 「だって……これから先は、和の作る『甘い玉子焼き』が蒼ちゃんの『ウチの味』になるんでしょ?」 「…………………」 「今まで違う人生歩いて来てんだもん。玉子焼きの味が違うのは当たり前のことじゃん」 「…………………」 「蒼ちゃんが家庭の味を知らないんなら…これから2人で作って行けばいいことでしょ?何を迷ってるの?そんなの絶対嬉しい事に決まってるでしょーが!」 大きく目を見開いちゃって……俺がこんな事言うからビックリしたんだろうな。でも、和はすぐに俯いてしまう。 「………翠さん…………でも………」 んもー………家を飛び出しちゃったこと、すっごく後悔して、今すぐにでも帰りたいくせに。 ホント…素直じゃないんだから。 「あ!和。ウチにね、これからお客さん来んの。悪いんだけど帰ってくれる?」 「ええ?誰よ……こんな時間に?」 「くふふ♪さ、荷物持って!はい、サヨナラ!!」 「ちょ…………翠さんっ!?」 バタン!! 可愛い天邪鬼さんをコタツから引っ張り出してコートを着せて、玄関から問答無用で外に放り出す。 ………くふふ♪イイのイイの♪ だって………ほら。 すぐそこで、鼻を真っ赤にして寒そうに立っていた旦那様が、君をあたたかく抱きしめてくれるはずだから。 「もー…世界一幸せな夫婦は、世話が焼けるなぁ」 ベランダから外を見れば、仲良く寄り添って歩く後ろ姿がみえて……俺はとても幸せな気分でカーテンを閉めたのだった。 おわり ……じゃなくて、続いちゃう(笑)
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