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さすが…。
和輝が豪語した通り、ほとんど画面を見ていないのにキャラクターはどんどん進んでいく。
しかも、俺が必死で避けまくった敵キャラは、すべて退治されてて、コインの数も桁違い!!
素晴らしすぎるおじさんキャラ捌きに、思わず手を叩いて賞賛すると…和輝はチラリとこちらに視線を向けた。
だけど、その瞳からは何の感情も読み取れなくて…。
仕方なく大人しくゲームのゆくえを見守ることにした。
いよいよ、このステージもゴール間近の大詰め。
目の前に見える、ゴールフラッグを掲げる為に立つ高いポール。
敵も残すは足元をチョコチョコと近付いてくるキノコ1匹のみ!!
このままポールに向かってジャンプすれば、ゴールが決まって花火が上がり…。
その時点で、俺は『賭け』に負けて、まさに一巻の終わりとなるのだ。
手に汗を握りつつ、画面を食い入るように見つめていた俺の視線の先で。
…ステージ最後の敵キャラであるキノコに、ポコンとぶつかったおじさんキャラは…。
ゴール直前にもかかわらず、悲しげなBGMとともに画面から消え失せた。
「……………しんじゃった…」
そう呟いた和輝の横顔が、今すぐにでも泣き出しそうで…。
「やったーっ!!俺の勝ちだねっ!!和輝、ありがとーっ!!」
わざと明るく喜びを表現して、その華奢な身体をぎゅーっと抱きしめた。
「………蒼麒なんて………大っ嫌いなんだからね…」
胸に顔を埋めたまま、聞き取れないくらい小さな声での呟きが聞こえ……その瞬間に、俺は最高の賛辞を手に入れた。
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