たんすいかぶつ

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そんなわけで。 今日も今日とて、春風学園高等部の生徒会室は、至って平和で…………。 和「アンタね…イイカゲンにしなさいよ!」 翠「だってだってぇーーー」 和「紅さん!!アナタもです!!」 紅「でもでもぉーーー」 蒼「すげぇなぁ。これ全部、翡翠ちゃんが食うのか?」 紫「…………さすがに買いすぎだと思うケド?」 仲良し5人組の囲む応接セットのテーブルの上には、これでもかー!!と言わんばかりに積み上げられたお惣菜パンが鎮座している。 和「しかも、ぜんぶ焼きそばパンとか……アリエナイでしょ!!」 いつもなら紅音の座る生徒会長の席にどっかりと座りこんだ和輝は、怒り心頭状態だ。 ソファーの端っこに、ちんまりと腰掛けている翡翠と、何故か床に正座してしまった紅音は、ちらりと視線を交わし合った。 そもそもの発端は、何気ない翡翠の一言。 翠「あーー。なんか、美味しいモノ食べたいねぇ、紅ちゃん(*'◇'*)」 紅「翡翠くん!君の好きな『美味しい物』って何?」 お願い!教えて!…なんて。 学園一の秀才であり、イケメンさんであり、高等部のほぼ全員から信頼と期待を寄せられている生徒会長は、この目の前に座る碧色の瞳を持つ優しい風貌の彼の側では、まるで別人に豹変する。 生徒会役員のなかでは、そんなの皆知ってるコトだし、今更っちゃ今更なんだけど、この『紅音』という男は、生徒会室から1歩踏み出した瞬間に、崩れまくったどうしようもないデレ顔から、シャキーンな品行方正まるで隙無しの生徒会長の顔へとシフトチェンジをすることが可能で、なにも知らない恐れをなした生徒たちからは、影でこっそり『帝王』と呼ばれているとかいないとか。 だけど、そんなことは紅音にとってはどーでもいい些細なコトでしかなくて、今は大好きな翡翠の喜ぶ顔が見たい一心で、ニコニコ笑う彼の側で必死にそれを聞き出そうとしているらしい。 そんな『いつもの光景』を見た和輝は、いつものように盛大なタメ息をつきながら、「ちょっと職員室行ってくるから」と言って分厚い資料を抱え、生徒会室を出て行った。 、
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