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そんなこんなで、夏休みに突入したある日のこと。
「こんばんは~!和輝くん居ますかぁ?」
古宮家の夕餉の時間に突如として現れたのは、生徒会副会長の奥山蒼麒。
なにかと俺に絡んでくる鬱陶しい上級生で…どうやら俺の恋人…らしい。
「突然なんですか?こんな時間に…」
「ねぇ、今から出掛けるからさ、仕度して?」
「………は?」
「3日分くらいの着替えがあればいいよ。なんならパンツ貸すし」
「それは盛大にお断りしますけど」
「もぉ、早く早く♪翡翠ちゃんとこには紫峰を行かせたから、あっという間に準備してくるよ。こーゆーのはね、紅くんじゃダメだからwww」
「ちょっと待って!一体何なの?」
「だーかーらぁ…行こうよ、甲子園♪」
「………はぁ?」
「甲子園に高校野球見に行こう!」
………確かに明日は夏の高校野球の開会式。
とはいえ、いきなり行こうとか…訳が分からない。
それに、こんな時間にどうやって行くの?とか、チケット持ってないじゃん?とか……浮かんでくるのは疑問符ばかりだ。
まったくもってアリエナイ申し出に、拒否の言葉を投げつけようとした瞬間…
「蒼麒くん、これでお願いするわね~!」
と、大きめなリュックを渡されて、お気に入りの帽子をズッポリ被らされた。
「ちょ……母さん!?」
「とりあえずぅ、必要そうなものは入れといたわよ。あとは蒼麒くんに完全お任せでいいのよね?」
「もちろんです、お義母さま!」
「行ってらっしゃい和輝。翡翠ちゃんも一緒だっていうし、蒼麒くんもいてくれるから安心だわ。みんなで楽しんできてね」
「なんなんだよ、いきなり!何で承諾しちゃってんの母さん!」
「蒼麒くんから前もって連絡があったのよ。野球が好きな和輝を高校野球の開会式に連れて行きたいって。何日かあっちにお泊りになっちゃうから許可してくれませんかって」
「………………」
「やだなぁお義母さま。それはナイショって言ったじゃないですかぁ」
「あらやだ。そーだったわね。ま、とにかくみんなを待たせてはいけないわ。早く行きなさい。じゃ、蒼麒くんよろしくね」
「はい!行ってきます!」
「………………」
そういえば…今日はなんだかいつもより急かされるなぁとは思ってたんだ。
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