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そんなこんなで、いつの間にか座席で寝ちゃってたオレを、ゆさゆさとゆり起こしてくれた紅ちゃんが、輝くような笑顔とともに窓の外を指差した。
「翡翠くん、見て!」
「わあぁぁぁ、甲子園球場だぁあああああぁぁ!」
感動のあまり大声で絶叫しちゃった!
その声で起きて来たらしいカズに「ウルサイ」って怒られちゃったけど……カズ顔色いいみたい。
元気そう。よかった!!
念願だった高校野球の開会式を5人で楽しんで、兵庫まで来たついでに大阪の名所もあちこち観光して、そーちゃんちの系列ホテルのスイートルームでカズとマクラ投げして遊んでしーくんに怒られて……という楽しい5日間を過ごす事が出来たの。
帰りのバスもカズとずーっと手を繋いで…本当に楽しかった♪
「ねぇ翡翠くん!今度さ、俺と2人でどっか出掛けない?」
「何言ってんだよ紅さん!『一緒にお出掛けしたい人は?』ってアンケートで、翡翠は俺の名前を書いてくれてんの。なぁ翡翠。この間一緒に見てた雑誌のショップ行こうぜ」
「あんなデタラメなアンケート…全世界の人々が許しても俺は許さないからっ!」
「ファッションセンスが皆無な紅さんと行ったって、ダブルパーカーか迷彩柄しか選ばねぇだろ?そんなの翡翠に着せるつもり?そりゃ~あんまりでしょ」
………なんか………後ろでゴチャゴチャしてるみたいだけど……面倒だからほっといて。
あのラブラブな2人もすっごくいい雰囲気で、やっぱり甲子園に行って良かったなぁ…って思った。
なんだっけ……雨降って地固まる…的な?
うふふ。かずったら照れちゃってんだね。凄まじいパンチ繰り出しちゃってる。
うーん。でもちょーっと脇が甘いから、今度キックボクシングのお教室に強制連行しよーっと。決まり♪
ってことで、くるりと身体の向きを変えたら、口論中の2人に向かってにっこり笑う。
「んふ♪じゃあさ、お洋服見たいから3人で行こ?しーくんと一緒に「紅ちゃんをオシャレにしちゃおう大作戦~♪」を決行しまーす!皆のもの、出陣じゃ!」
「「御意のままに!」」
ザザッ…と、オレの足もとに跪く紅音と紫峰を憐れむように見てくるカズに、ひらひら~っと手を振って。
まだまだオレの夏休みは終わらないぞ~!って気合いを込めて…お土産にいっぱい買ってきた甲子園グッズの入ったリュックを、えいっと背負い直した。
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