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先ほどとは、うってかわってニコニコ顔になった翡翠が身を乗り出して囁いてくる。
「あのね、かず聞いて!今度ね、ウチの園に真人くんが撮影に来てくれるんだってーっ!!チョー嬉しい!どうしよう!?」
「…………どうするも、こーするも…。うん、良かったね!」
「うん!!」
真人は動物を扱うバラエティー番組にレギュラー出演していて、どうやらその撮影場所が翡翠の勤めている動物園に決まったようだ。
あまりの喜びからか、今にも天高く舞い上がってしまいそうな翡翠の袖を掴んで、現実へと引き戻す作業は、なかなか容易ではなかった。
「そだ。真人くんがね、夏休みになったら一緒に遊ぼうって。奏さん達も一緒にだって!!」
「うん、いいよ。みんなでの方が楽しいもんね」
「やった!久しぶりにメチャメチャ楽しそう!!」
「そうだね。……でも、翠さん。アイドルって、この時期忙しいんじゃないのかなぁ?それに、遠くにいる紅さんと紫峰には、残念なお知らせをするしかないけどね……」
「へ?大丈夫だよ、かず?」
「なにが……大丈夫なの?」
「だって、紅ちゃんも、しーくんも2人とも帰って来るもん。俺の夏休みに合わせてね♪」
「ええっ!?」
「それに、『五彩は、蒼太くんのお心次第で何とでも』…って。秀ちゃんがそう言ってたって真人くんが」
「………………」
太陽のような笑顔を見せてくる純真無垢な幼なじみの向こう側に、恐るべき権力分布図の一面を垣間見た気がして…。
ここはテラス席だから冷房が効きすぎているはずなどないのに、ゾクリと背筋に寒いモノが走ったのは……きっと気のせいではないだろう。
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