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紫峰 side
「三船?そーゆーわけだからさ、チケット取ってよ、甲子園。…そうそう、開会式。5枚ね。…そーだ!それ使おう。…んじゃ、ヨロシク!」
生徒会室の彼らの姿から目を離すこともなく、手元のスマホから三船さんに電話をし始めた蒼さんを、呆れ8割尊敬2割くらいの比率で眺める。
モニター室に入ってきた時は、ただびっくりしてただけの紅さんは、気がつけば蒼さんと並んで画面にがぶりよりの姿勢を取っていた。
あああ。この学園でも名高いイケメンさんなのに、他人には絶対に見せられない顔だと思うよ。
「紫峰。お前だって、ヒトのこと言えねぇだろ?」
「え?」
…確かに。
確かにね、高校野球について熱く語る翡翠がカワイイな~とか思ってたけどさっ!!
「んふ。紫峰カワイイ♪」
なんかムカつく。
「まぁまぁ。そんなに怒るなって。紫峰、お前、翡翠ちゃんのお世話係、お願いできる?」
「ええっ?」
「甲子園行こう。夜の高速道路走って、朝には到着。5人で開会式見に行くぞ!」
「マジ!?」
「マジマジ。紅くんにはその役、ぜったいに無理だろ。だから紅くんはスケジュール管理とお財布係。紫峰は、このお出掛け日程の間、ずーっと翡翠ちゃんお世話係になるけど…問題ねぇだろ?」
「ない。ないよ!任せといて!」
異論なんてあるはずが無い。だって俺も高校野球大好きだし、ホントならモニター室じゃなくて、あっちにまじりたい位だったんだから。
「よし。決まったところで今日は解散。詳しいことはまた後日~♪」
その後は、蒼さん指示のもと準備を着々と進めていき…。
いよいよ当日となった今日、通い慣れた翡翠の家のインターホンを押した。
「はーーーい♪」
開いたドアから、まるで鳥のようにふわりと細身の翡翠が飛び出してきたから、思いっきり抱きしめてやる。
「しーくん!俺…ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」
なんだその挨拶…。可愛い過ぎるだろーがっ!
「うん、よろしくな。翡翠、荷物はそれだけ?」
ドキドキする胸と上擦りそうな声をナケナシの理性で押さえ込んで荷物を持ってやれば、すっと右手を差し出されて…。
「しーくん、おてて繋いでいこ♪」
「……え?」
「カズが、アンタはすぐ迷子になるんだから紫峰の手をずっと握っていなさいって。だから、ハイ」
…和輝……グッジョブ!!!
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