夏の思い出 ぱーと すりぃ♪

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紫峰 side 翡翠としっかり手を繋ぎ、着替えを入れた大きなバッグを持ってバスへと誘導する。 これから進むは長い道中、計画が決まってから、翡翠のためにと手作りお菓子もばっちり用意。せっかくの機会だし、めいっぱい楽しんで欲しい…俺としてはその気持ちだけ。 お菓子を用意したことを伝えれば、いつも以上にキラキラした笑顔を見せてくれて…ホントに可愛らしくて目眩がしそうだ。 車体に「OKUYAMA」って書かれた大きなバスの前で「どうぞ」と恭しく頭を下げれば、「そーくん紳士。素敵!」なんてお褒めの言葉まで頂戴してしまった。 バスの中は………人の趣味をとやかくいうつもりは毛頭ないけど、まぁすごい。 蒼さんの自宅の応接間をそのまんま移して来たみたいにキラビヤカ。俺みたいな一般人では目がチカチカしてしまう。 ほぼおばさんの趣味だろうな…とは思うけど、古き良きバブル時代を彷彿とさせてくるその仕様。 とはいえ、そんなの教科書でしか知らないからこれが本物なのかどうか…俺らは知らなくていいと思うけど。 ふかふかのソファに悠然と座って、翡翠に手を振っている紅さんがいつもよりカッコつけてて、あーウザイなーと思ってた矢先、お約束の流血大惨事発生。 慌ててティッシュを取り、その鼻を遠慮なしにぎゅーぎゅーと押さえつける。 イケメン台無しだけど、人様の所有物を汚すわけにはいかないでしょ。常識的に!! 紅さんがなんかモゴモゴ言ってるみたいだけど、そんなのは完全無視。清潔第一。だって翡翠が一緒なんだもん。 心配そうに紅さんを見つめる翡翠に「大丈夫、こんなのすぐ止まるよ。いつものことじゃん」と言えば、安心したように微笑んでくれた。 そんなことをしていたら、蒼さんに手を引かれて現れた和輝が、バスのドアの所に立った途端、大きな声を出す。 「ちょっと待ったーー!」 「かず♪このバスすごいね~?りむじんばすっていうんだって。中はお部屋みたいだし、パーティができちゃう♪それに明日の朝には甲子園に着いちゃうなんて、すごいね~そーくん♪」 「翡翠ちゃんに喜んでもらえて良かった~♪これ、ウチの親父のだからちょっと趣味が良くないんだけどさ(笑)。こんな派手過ぎるシャンデリアとか、イマドキありえねぇだろ?」 なんて、翡翠と蒼さんが楽しそうに笑いあっている。俺が鼻にティッシュを詰め込んだ残念な紅さんと一緒に「喜んでもらえて良かったな」なんて言いながら、和輝にコッチへおいでと手招きしたんだけれど…。 異様な雰囲気に入口のほうを見てみれば、困惑した顔の和輝が、その場に呆然と立ち尽くしていたのだった。
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