和くんたら、またやっちゃったお話

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【 和輝 side 】 「つきたてのお餅…食べてみたいねぇ……」 「……うん。美味しそうだよねぇ」 翠さんの口からポロリと溢れたそれに、ついうっかり同調してしまった自分に気付き、慌てて両手でフタをしてみたけれど。 時、既に遅し。 「…三船」 「かしこまりました」 ああああ…三船さぁぁぁん(泣) もお蒼麒のおばかぁぁぁぁ!!! そして、またもや、ついうっかり口を滑らせてしまった俺のばかばかばかーーっ!!! とはいえ、新年が明けてまだ2日めだっていうのに、蒼麒の家にみんなで集合してる俺達ってホント暇なんだなって改めて思う。 蒼麒の家族も紅音の家族も海外に行っちゃってるし、紫峰の家は病院だから盆暮れ正月なんてもってのほか。 俺ん家だって、この正月は両親だけで温泉でしっぽりデート(はーと)とか言って、さっさと出掛けて行っちゃったし。「アンタのことは蒼麒くんに全部任せてあるから安心ね~」だなんて、母親のクセに無責任にも程がある。 翡翠はね…うん。独りぼっちで悲しい思いをさせる訳にはいかないからね。あの2人がここぞとばかりに甘やかしてて、それはそれでちょっと心配してるのよ。 大晦日には、翡翠が前から行きたがってた大手芸能事務所所属の男性アイドルグループがいっぱい出演する年越しカウントダウンコンサートを東京ドームまで観に行って、それが終わってから、都内のあちこちの神社を巡って初詣しまくってきたらしい。夜店がいっぱい出てて、お祭りみたいで楽しかったそうだ。 良かった。貴方が楽しいなら俺も楽しいから。 で、俺は、蒼麒と2人で大晦日を過ごさせてもらったんだけど……元日から湿布(さろんぱす)のツーンとした匂いを全身に纏った自分を大いに反省している。 新年になった瞬間から『姫はじめ』とか言って好き放題しやがって…あのケダモノめ。 しかも、さっき翡翠から「お土産だよ~ん♪」なんてもらったコンサートグッズの団扇が数枚と、神社のお守りの山……全部「家内安全」と「子宝祈願」って。 絶対にアイツらの入れ知恵に違いないから、これから一年かけてジワジワと仕返ししてやろうと思ったけど、さすがにそれが「一年の計」だとしたら人生が虚し過ぎるので、とりあえず保留中。 まだ松の内も明けてないし、これからゆっくり考えるとして、深呼吸して心を落ち着かせた。
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