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そんなやり取りを地獄耳を駆使して察知した蒼麒が、満面の笑みを浮かべながら、ちょっとだけ照れ臭そうに言葉を投げかけてくる。
「えぇぇそーなのぉ?もぉ姫ったらぁ…マジ嬉しい!でもでも『カッコイイな』とか『頼れる旦那さんだな』とかそーゆーことは、心の中だけじゃなくて俺の真正面からスッキリキッパリガッツリ言って欲しかったなぁ」
「あんた……アホなの蒼麒?ガッツリとかわけわかんない。それからね翠さん。変な憶測やめてよね新年早々」
「はいはーい。じゃ、餅つき行こ!!」
「『はい』は一回でいいの!!」
そんな不毛なやり取りを全く理解していない翡翠に手を引かれて参加させられた餅つきは案外楽しくて、職人さんたちとも大いに盛り上がり、美味しかった出来たてのお餅をお腹いっぱい食べ過ぎてしまった俺たちは、リビングに戻ってきたのはいいものの、すっかりだらけてしまった。
そんななか、三船さんが淹れてくれたお茶を啜りながら、蒼麒があたりまえのように話し出す。
「今日はどーせ泊まってくんだろ?せっかくの正月だし、夜遅くまで遊び倒そうぜ~!」
幼いころから両親共に忙しく、お正月も長期休みも、そして大切な誕生日ですら、いつも独りぼっちだった蒼麒。いつもとは違うお正月が心から楽しそうな蒼麒を感慨深い眼差しで見つめながら、三船さんが優しい笑みを溢した。
「蒼麒さま…お正月を遊び倒す…というのは若干の語弊があるような気がいたします。が、それはともかく、皆様のお部屋はご用意出来ておりますよ」
「ありがと三船。さすがだね~仕事早いね~」
「痛み入ります。ところで和輝さま」
「はい」
「和輝さまは、翡翠さまと同室で…ということでよろしいですか?」
「!?」
「ええ。ありがとうございます三船さん。翠さん、いいよね?」
「うん!!やったー!!かずとお泊りだ!久しぶりだよね~。楽しみだね~♪」
翡翠と二人で手に手を取り合ってはしゃいでいると、後ろから陰鬱な気配が漂ってくるのが分かったけど、それは完全無視して笑いあう。
「姫ぇ…姫は俺と一緒じゃないの!?」
「翡翠くん!俺とじゃダメ?」
「翡翠……ふたりで話したいこと、いっぱいあるのに」
そう話す3人に向かって、翡翠がペコリと頭を下げた。
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