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「あの...」
ひとりで頷いたりしている彼に私は声を掛けた。
「あっごめん。俺なら大丈夫だから...って君ひとり?」
彼は私の周りを見渡しながら言った。
「私、友達いないから...」
小さく呟いて俯いた私の頭に手を乗せて彼は言った。
「じゃあ俺が友達第1号な。俺は千葉一磨、中2。君は?」
彼は私に自己紹介を求めた。
不安な気持ちを抑えながらゆっくりと口を動かした。
「私は、水本凜。小6です」
言った後はさっきまでの緊張が嘘みたいに気持ちが良かった。
ひとつ壁を乗り越えた感じだった。
「で、凜はどこに行きたいの?俺が連れてってあげようか」
凜という言葉が頭に響いた。
今までで私をそう呼んだのはお父さんとお母さんだけだった。
「海...見てみたいの。初めてだから...」
「え、海見るの初めてなの」
一磨くんは驚いた顔をした。
今どき海を見たことない人なんて珍しいんだろうな。
私に優しくしてくれたこの人なら、本当のことを言ってもいいかもしれないと思えた。
「私、小さい頃から病気持ってて、実は外に出るのも今日が初めてなの」
自分の弱いところを見せるのが怖かった。
でも一磨くんなら私を受け入れてくれる気がした。
「そっか、だから友達いないって...じゃあ今日は一日俺と遊ぶか」
そう笑ってみせる君に、私はこの時から惹かれていたのかもしれない。
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