第1章

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春の祭りの最終日、街は祭りの終わりを名残惜しむように一際沸き立っていた。 そして、この日はリンたち新兵が初めての任務に臨む日でもあった。 王宮の庭園が一般に公開される日にあたり、近衛兵は王宮内を最もよく知る兵として庭園及び王宮の警備を任されていた。 身支度を整え、鏡の前で落ち着かなく髪や帽子の角度を直すリンの背中をユウキがぽんと叩く。 「そんなに緊張することないよ。昨日までにしっかり事前準備をしたでしょう?あの通りにやればいいんだから、不安がることないんだよ。それに僕が一緒だしね。」 「はい!よろしくお願いします!」 かちこちに顔を強張らせるリンを見て、ユウキは困ったようにくすりと笑った。 ユウキの脳裏には自分がこうして緊張して初任務の日を迎えた時のことが、波が押し寄せるかのように思い浮かぶ。 そのときは自分がリンにしたように、キャンディスが背中をぽんと叩いて勇気づけてくれたのだった。 「それじゃあ行こうか。」 「はい!」 二人は宿舎を出て、柔らかな日差しが気持ちいい春の空の下へと足を踏み出した。
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