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ほとんど眠れない夜を過ごし、
友哉は、月曜の朝を迎えた。
あれから、電話は鳴らない。
友哉からもかけ続けたが、
さわ子の携帯に、
電波が届くことはなかった。
仕事に行く気にはなれなくて、
会社には、体調が悪いと言って、
休みをもらった。
いても立ってもいられず、
友哉はさわ子のマンションへと向かった。
しかし、何度チャイムを鳴らしても
返事はなく、
悪い妄想ばかりが、頭の中に広がった。
そしてその足で、
友哉は警察署を訪れた。
「恋人が山で遭難したんです」
皺ひとつない制服を着た警察官に、
友哉は必死な顔で訴えた。
「でもねえ、電話があったんでしょ、
貴方に…
本当に遭難したのなら、
貴方じゃなく、
警察や消防にかけると思いますよ」
警察官は、持っていたペンで
頭を掻きながら、
面倒くさそうに言った。
「でも…」
「連絡が取れなくなって、
まだ一日も経っていないんだから、
そんなに心配しなくていいでしょう。
いい大人なんだから、
今日あたり帰ってきますよ」
いかにも作ったような笑顔でそう言って、
警察官は話を終わらそうとした。
さわ子の身内でないという理由で、
友哉は捜索願すら、
出すことを認められなかった。
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