第1章  遭難

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ほとんど眠れない夜を過ごし、 友哉は、月曜の朝を迎えた。 あれから、電話は鳴らない。 友哉からもかけ続けたが、 さわ子の携帯に、 電波が届くことはなかった。 仕事に行く気にはなれなくて、 会社には、体調が悪いと言って、 休みをもらった。 いても立ってもいられず、 友哉はさわ子のマンションへと向かった。 しかし、何度チャイムを鳴らしても 返事はなく、 悪い妄想ばかりが、頭の中に広がった。 そしてその足で、 友哉は警察署を訪れた。 「恋人が山で遭難したんです」 皺ひとつない制服を着た警察官に、 友哉は必死な顔で訴えた。 「でもねえ、電話があったんでしょ、 貴方に… 本当に遭難したのなら、 貴方じゃなく、 警察や消防にかけると思いますよ」 警察官は、持っていたペンで 頭を掻きながら、 面倒くさそうに言った。 「でも…」 「連絡が取れなくなって、 まだ一日も経っていないんだから、 そんなに心配しなくていいでしょう。 いい大人なんだから、 今日あたり帰ってきますよ」 いかにも作ったような笑顔でそう言って、 警察官は話を終わらそうとした。 さわ子の身内でないという理由で、 友哉は捜索願すら、 出すことを認められなかった。
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