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「もしもし、友哉」
「さわ子か、どうした?」
さわ子のいつもと様子が違う声に、
友哉は敏感に反応した。
「実は…遭難してしまったみたいなの」
今では、山によっては
山頂付近まで携帯電話の電波が
届くようになっている。
警察などにかかってくる、
遭難者からの救助要請の連絡も、
携帯電話からが最も多い。
だが、携帯が繋がるのは
山中でも開けた場所であって、
周りが木に囲まれていたりすると、
電波が不安定になったり、
繋がらないことも多い。
電話から聞こえるさわ子の声は、
とても不安定だった。
「遭難って…今、どこにいるんだ?」
「わからない…
いつの間にか、登山道を外れてしまって」
「救助要請の電話はしたのか?」
「ううん、迷惑かけたくないから、
自分達で何とか帰ろうとしたんだけど」
その時、電話の向こうで
「さわ子」と、名前を呼ぶ声が聞こえた。
友哉はそれが緑川美夏の声だと、
すぐにわかった。
電話から、さわ子が走っている様子が
聞き取れた。
どこかへ向かっているようだった。
恐らく、名前を呼んだ美夏の元へだろう。
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