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「薔薇色のホテル…」
友哉はすぐにパソコンで調べてみたが、
隣町はおろか、日本中のどこにも
そんな名前のホテルはなかった。
「ホテルじゃないのか?
そもそもなぜ、そんな山の中に
看板なんてあるんだ…」
友哉は焦っていた。
もうすぐ日が暮れる。
夜の山の怖さは、
登山をしない友哉にさえわかる。
友哉は警察に電話しようとして、
その手を止めた。
それは、さわ子たちが
登山の素人ではなかったし、
少なくとも彼女達は、
携帯の電波が届く範囲の
近くにいる。
そして、居場所を説明できない自分が
連絡するより、いざとなれば、
電波の入るさっきの場所まで戻って、
さわ子自身から救助要請の連絡を
入れた方がいいと思ったからだ。
それはさわ子自身が
一番よくわかっているだろうし、
友哉は彼女を信じている。
何より、こんな状況にあっても、
さわ子と一緒にいるのが
あの、緑川美夏だということが、
友哉には心強かった。
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