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「友哉くんがいない時は、
私がさわ子を守ってあげるよ」
美夏は頬杖をついて、
友哉とさわ子の二人の顔を
交互に見ながら、
笑顔のままそう言った。
その言葉は、
非常に真実味を帯びていた。
なぜなら、
その時もうすでに、
さわ子は美夏に守られた経験が
あったからだ。
それは学生時代の、
ある夜の出来事だった。
さわ子が美夏と二人で
食事をしての帰り道、
酔った男にからまれた。
逃げようとしたさわ子の腕を、
酔った男が掴んだその瞬間、
美夏が男の腹部に、
見事な回し蹴りを決めたのだ。
美夏の父親は空手の師範で、
美夏も高校を卒業するまで、
父親の道場で空手を習っていた。
そんな美夏の踵が、
まるでアクション映画のごとく、
綺麗に男の腹に突き刺さった。
蹴りを決められた男は、
呻きながら腹を押さえ、
そそくさとその場から
退散したのだった。
友哉も社会人のフットサルチームに
所属するスポーツマンではあったが、
喧嘩ではとても美夏に敵わない、
口にこそ出さないが、
さわ子は本気でそう思っていた。
友哉からしても、
そんな美夏が一緒だからこそ、
女二人だけで登山に行くと言っても、
安心して行かせられた。
そして今回もまた、
いつものように、
山頂で撮った二人の写真を
さわ子の笑顔とともに
見せてくれるものだと、
友哉は思っていた。
日曜の夕方までは…
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