必然

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必然

「風が変わりましたね」 小田がポツリと呟いた。 徳永は空を見上げたが、何も変わっていなかった。 「待たせたな…」 そこへ、黒のスーツで真っ黒なサングラスを掛けた男が現れた。 徳永は驚いた。 その男はキザを通り越して三流映画スターのようだった。 「何処へ行ってたんだ、土方くん」 「長丸を送り込んだ張本人を探してたのさ」 小田は徳永に土方を紹介した。 「こちらは公安局の土方さん」 土方は徳永をじっと見た。 「あんたが徳永さん?」 「はあ……」 徳永は土方の迫力に少し後ろに下がった。 土方はサングラスを外した。 「土井さんは最近何か変わった事はなかったかな?」 まるで刑事のような質問をぶつけてきた。 「今年に入ってから変な夢を見るとか言って体調を崩してましたが……」 土方は眉間にシワを寄せ徳永を覗き込んだ。 「あんた…何かした?」 「えっ?」 徳永は急な問いに変な声を上げた。 土方は小田を見た。 「土井の潜在意識が反応したな……きっと」 徳永が土方に質問をぶつけた。 「何が……原因で…」 土方は冷めた口調で言った。 「あんたの遺伝子に反応したんだよ」 「あなた方の言っている事は理解出来ない」 徳永はあまりにも突飛な答えで呆れ返った。 「あんたは徳川秀忠の遺伝子を組み込まれている」 徳永は土方の言葉に呆れてしまう。 「あなたは頭がおかしいのですか?それに利さんと何の関係もないじゃないですか?」 徳永は土方の馬鹿馬鹿しい会話に嫌気が差した。 「その徳川秀忠がこの時代にタイムスリップしていたらどうする?」 「あっ………」 徳永は思い出した。 ……あの……写真だ…… 土井の部屋に飾ってあった古い写真を思い出した。 土井の脇で笑っているメイド姿のクラスメート。 何度聞いても名前が思い出せないと利さんは言っていた。 まさか……その男子が…… 徳川秀忠…… 徳永はあまりにも現実離れした話に笑い出した。 「有り得ない……」 「土井さんも徳川秀忠の生きていた時代にタイムスリップしています」 小田が付け加えた。 「……そんな……馬鹿気たことを…」 徳永は呆れながら土方を睨んだ。
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