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「僻地で悪かったなっ!最終電車でとっと帰れっ!」
徳永はバスルームに逃げ込み鍵を掛けた。
「もう二度と来るなよっ!」
土井は腹立たしくなってタバコを吸いにベランダへ出た。
本当にムカつく野郎だ……
タバコを加えて手摺に寄り掛かった。
そもそも二人の出会いは、土井が大学4年生の時に徳永が通う大学病院へ交通事故で入院した。
偶々同じ病棟で研修医だった徳永が土井の担当になった。
退院しても定期的に通院していたので、何度も顔を会わせるうちに仲良くなった。
気持ちが落ち込んでいた時の徳永ののんびりとした気の利かない口調が土井は凄く気に入った。
時々話が噛み合わなくて笑ってしまう。
良い友達関係になっていった。
それから、土井が就職すると徳永はよく部屋に転がり込んで来た。
徳永は家に帰るより土井のアパートの方が近いと言って夜遅くに訪ねてくるようになった。
その時は3分1くらいは徳永の私物が置いてあった。
奇妙な同居生活が一年続いたが、徳永の病院が変わって土井のアパートへ余り来なくなった。
土井も2年目から色々な地域を点々としていた。
それに、もう、いい加減彼のお守りは勘弁してもらいたかった。
しっかりしてそうだが、相当なお坊ちゃまだった。
土井は同居の間、徳永に家事を全部やらされた。
余りにムカついたので、炊飯器、洗濯機、掃除機の使い方を全て教えてやった。
徳永を一人立ちさせてやったのは俺だ。
親から感謝状を貰いたいくらいだ。
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