突然

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土井と長丸が広い部屋に2人きりになった。 ダブルベッド2台、格調高そうな机と椅子、窓際に寛げるソファ、トイレと風呂が別々に分かれている。 広い……三人でこの広さ…… あの男、一人でいつも使ってたのか…… 土井は溜息を吐いて、鞄と車のキーを机に置いた。 ホテルに来る前に立ち寄った店で長丸と自分の下着と服を買った。 その紙袋を机の脇の棚に置く。 「長丸。一緒に風呂に入るか?」 長丸はコクリと頷き、広いベッドに飛び込んだ。 土井は勝手に冷蔵庫を開けてビールと取り出した。 「凄げえ…」 テーブルの上に果物が皿に盛り付けてあり、サンドイッチが一皿置かれていた。 「長丸。風呂の前に食うか?」 長丸は土井に抱きついた。 「ちゃんと食べてからにしようぜ」 「うん」 土井はビールの栓を開けた。 「うまっ」 長丸はフォークでリンゴを刺して食べていた。 「徳永くん。レベル違いすぎ…」 2人でサンドイッチを食べてしまった。 腹が満たされたその後、土井は長丸と風呂に入った。 長丸はキャーキャーいいながらシャワーで遊んでいた。 一通り長丸を綺麗にしてやった。 机脇の棚に三段の引出がついていた。 そこを開けるとすっぽり被れるパジャマが3枚入っていた。 子供 用のパジャマはなく土井のTシャツを長丸に着せた。 長丸はオモチャの人形のように可愛く見えた。 「はい、出来上がり」 「土井、一緒に風呂に入ったぞ」 「そうだけど…」 長丸はケラケラと笑っていた。 「可笑しなやつだな?」 長丸は土井に抱きついて言った。 「眠くなった」 土井は長丸を抱き上げてベッドに連れて行く。 フカフカの枕が4つ。 長丸が頭を入れるとそれだけでベッドになる感じだった。 土井はバスローブのまま長丸を抱えて昼間の疲れで眠りについた。 夜中近くに徳永が会議を終えてホテルに着いた。 部屋に入ると手前のベッドに土井は長丸を抱えて眠っている。 足下に紙袋とビニール袋が散乱していた。 長丸の着替えの残骸である。 徳永は鞄を棚に乗せスーツの上着をクローゼットに仕舞うと足下のゴミ片付けを始めた。 静かな部屋にガサガサ音がして布団の擦れる音が徳永の耳についた。
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