突然

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徳永はビールを一口飲んで土井を見た。 「分かりません……」 土井は眉間に皺を寄せる。 徳永は土井のビールを取り上げてテーブルに置いた。 「無性に気になるんです……」 「…それって…」 土井は徳永の顔を覗き込んだ。 「前世で僕の彼女って事はないですか?」 その一言に呆れて、土井は徳永の頭を叩いた。 「あるかっ!そんなもの!占いの遣りすぎだっつうの」 土井はなんとなく腹が立った。 何で腹が立つのかワケが分からなかった。 徳永からちゃんとした回答が欲しかったのかもしれない。 土井はイラついた顔でテーブルに置かれたビールに手をだそうとした。 徳永がその手を取ると土井は引き寄せられた。 「す……触るんじゃねぇぞ」 徳永はクスクスと笑い出した。 「だから好きですよ……」 好きって……言って……欲しかったのだろうか…… 土井は軽く首を横に振った。 「したいからだろう……もの欲しそうな顔してる」 土井は徳永から目を逸らした。 「そうですよ……」 土井は笑いながら平気で言う徳永にイラつく。 「それはおかしいくないか?」 「普通でしょ?」 徳永が土井の首に唇を当てた。 「普通じゃねぇだろう…どう考えても…」 「価値観の問題です」 徳永は土井の首から離れると右手でメガネを外した。 「昔からあったんですから仕方ないと思いますよ……近代になってこう変わったから普通じゃないかもしれませんけど…」 「それは屁理屈だな…」 「どうでもいい ですよ…そんなこと…」 徳永は土井を窓際のベッドに連れて行き、そのまま押し倒した。 「何するんだよ。ビールを飲んでただろう…」 土井は徳永の勝手さに本当に腹が立った。 「好き勝手するなよ……」 土井は徳永を睨み付けた。 「好きです……」 徳永の顔がゆっくりと下りてきて土井の唇を確かめるように重ねた。 何度も唇を攻めてくる。 息苦しくて薄く口を開けるとそこへ執拗に舌を絡めてくる。 土井は一度徳永を押し返した。 「……もう、いいだろう……」 「よくないです」 徳永は更にディープに攻めてきた。 土井の唇から息継ぎの声が漏れる。 徳永が唇を離すと土井は自分の口を手の甲でそれを塞いだ。
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