突然

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「そんなに嫌われてるんだ…僕…」 徳永は土井を見下ろした。 その顔が寂しそうで、土井の胸の奥がチクリと疼いた。 「もう…いいだろう……」 土井はそう言うとわざと眠たそうに目を閉じた。 徳永が土井を上から抱きしめて耳元で囁いた。 「ずっと好きでいますから……」 その囁いた唇は土井の耳元に触れた。 土井は泣きそうになる自分に気付いた。 誰かにそう言ってもらいたかったのか? 誰かって……誰だよ…… 心の奥にぼんやりと霞がかかって見えない。 この霞が取れないかぎり…… 俺は……騙しながら 人を好きになる…… 徳永の笑った顔が見えた。 笑ってくれる……のか? 土井の唇を塞いでいた手はゆっくりとベッドに落ちていった。
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