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数分もしないうちに徳永が駆け込んで来た。
「いた……」
徳永はネクタイを緩めてスーツの上着を脱いだ。
そして、大きく息を吐いた。
土井はあまりに早い到着に驚いた。
「堀のすぐそこにいたので…」
一瞬、土井の泣きそうな顔に徳永はドキっとしてしまった。
「大丈夫ですよ」
徳永は土井に笑い掛けた。
「悪い……」
土井の素直な言葉に徳永はまたドキっとしてしまった。
「長丸くんは?」
土井は首を横に振った。
「この先を探すか…それとも元いた場所へ帰ってみるか…」
徳永は土井と反対側から公園内へ入って来た。
「僕が来た方向には子供はいませんでしたよ。」
その時、土井のスマホが鳴った。
「もしもし…」
『利彦くん?』
電話の相手は従兄弟の朋ちゃんだった。
土井は徳永の左手を引き寄せて、そこに付けている腕時計を見た。
朋ちゃんとの待ち合わせ時間が過ぎていた。
「あっ、ごめん。時間が過ぎてるね」
『それは、別に大した事じゃないけど…ここに……男の子がいるよ』
「えっ?男の子?」
『そうだよ…薄い水色のパーカーを着た子』
「長丸だ!」
土井は徳永を見た。
「今からそこに行くから待ってて!」
土井は電話を切った。
「長丸がいた!」
「どこに…?」
「待ち合わせ場所にいた…」
そう言うと土井は駆け出した。
徳永もその後を追った。
東御門からお 堀へ出て弥次喜多銅像が見えてきた。
30代の女性の脇に長丸が立っていた。
土井は長丸に抱き付いた。
「どこに行ってたんだよ…」
長丸はきょとんとしていた。
「十年ぶりだね。利彦くんでしょ?」
土井はその隣にいた女性に声をかけられた。
「ちょっと立派になっちゃって……中学生の時、ちんちくりんだったのに…」
土井を見て爆笑していた。
その女性は従兄弟の朋ちゃんだった。
「すみません、遅れて…お久しぶりです」
土井は立ち上がって挨拶をした。
その後ろに来た徳永が長丸の頭を撫でいた。
「こいつ探してさ…まさか、ここにいた何て思わなかったから、家康の銅像まで探しに行ってた」
朋ちゃんと目が合った。
「利彦くんの子供?」
「朋ちゃんのお子さんじゃないの?」
「やだ。私、独身だし子供もいません。誰がそんな冗談言ったの」
「えっ?」
土井の頭が混乱した。
うちの母さんがウソをついた……
あのババァ、適当な事言いやがって…
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