唖然

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楼門を潜ると神厩、高楼と拝殿に続く鳥居と参道が現れる。 土井は前にテレビで見た話を思い出した。 久能山東照宮と富士山と江戸城と日光東照宮はひとつのラインで結ばれる。 どんなパワーがあるんだか……教えて貰いたい。 そのまま真っ直ぐ行けば拝殿だが、長丸は右手にどんどん進んで行った。 長丸は神楽殿を横切り階段を上がると小さな神社が見えた。 その神社も通り過ぎ真っ直ぐ前の森を目指した。 「長丸。どこに行くんだ」 土井は長丸の後を追うのに必死だった。 土井は辺りを見渡した。 凄く賑わっていた見物客がぱたりといなくなった。 静寂が続く。 前を走っていた長丸が急に足を止めた。 ゆっくりと後退さりしてくる。 「どうした?長丸…」 土井にぴたりと背中を合わせてきた。 気づくと数人の男たちに囲まれていた。 「何だ?お前ら…」 「長丸さんをこちらに渡して欲しい。ご家族から依頼を受けている」 「さっきのおっさんと一緒か?」 「さあ、渡しなさい。」 男たちが一歩二歩と近寄ってくる。 土井は長丸を抱えると一番広く空いた正面の男の足を蹴り上げて神廟に走り出した。 「土井、あの木の下を潜れっ!」 目の前の巨木の根元に大きな穴が空いていた。 土井は長丸を抱えながらその根元に滑り込んだ。 その巨木の下の枯れ葉が宙に舞って二人の姿が消えた。 男たちは巨木の前に立ち止まっていた。 枯れ葉が静かに地上に降り、巨木の穴は無くなっていた。
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