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小田は続けた。
「世界で生き残るには良い遺伝子を……現在でも似たり寄ったりな話はありますよね」
徳永はコクリと頷いた。
「それが歴史上の人物だったらどうします?」
「えっ?」
徳永は余りにも突飛な話についていけなくなっていた。
「それをしてはいけないルールになってます。でも、たまにある事です。あなたのように全然違う世界に送り込み成果を調査している組織がある」
徳永は目を瞑って顔を手で覆った。
目眩が……吐気がする。
「もう……いいです。……聞きたくない……」
小田はそれきり口を噤んだ。
隠されていることはまだまだ有りそうだった。
徳永は気持ちの整理をつけよう息をひとつ大きく吐いた。
落とした鞄をゆっくりと拾う。
小田の話は俄かに信じ堅い話であった。
国道160号線の海沿いをタクシーは快調に走っていた。
海がキラキラと眩しく輝いている。
徳永はじっと海と空の青さを眺めていた。
小田がゆっくりとした口調で切り出した。
「長丸くんはある騒動の渦中の子供です。誰かが危険を察知してあなたのいる世界へ送り込んだ」
タクシーの運転手がバックミラーでこちらを見た。
変な組織の話かと思ったに違いない。
小田は軽く咳をした。
「それとも……土井くんの経歴を調べだのかも知れませんね。そこに偶然あなたが居た」
徳永は小田の顔をじっと見た。
「利さんが……何を……」
「遺伝子の成せる業とだけ言っておきますか」
そう言って小田はまた口を閉じた。
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