騒然

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徳永と小田は日本平へ到着して、ロープウェイで5分、久能山東照宮へ乗り込んだ。 階段の上に楼門が見えた。 徳永はスマホで土井に電話をかけてみた。 「もしもし、と……」 「只今、電源が切られているか、電波の届かないところに……」 徳永は電話を切る。 小田は拝殿の上の空を見上げていた。 小田が居る場所は青空が広がっていたが、拝殿の真上から灰色の雲で鈍よりとしていた。 そこが境界線のように空が二つに割れている。 「まずいな……」 「何が?」 「空を見て」 小田が雲の境目を指した。 「地場が狂ってるかも知れない」 「どうなるんですか?」 「時間軸が狂っていたら困るな……」 小田は徳永に苦笑いを見せた。 徳永ははっとした。 「まさか、そこに利さんが……居るんですね?」 「電話が通じなかったでしょ」 徳永は慌てて階段を駆け上がった。 「行ってもムダだ。そこにいないから…」 小田の話も聞かず、徳永は拝殿の唐門目指して、見物客を避けて走った。 彼の感なのか拝殿には行かず、神楽殿を横切り、神廟の前を通過し、階段を上がると日枝神社が現れた。 ここだ…… この近くの筈…… 走ったせいか息が苦しい。 徳永はネクタイを緩めて空を見上げた。 少し先で空が二つに別れている。 徳永はその先を目指す。 小田がやっと徳永に追いついた。 「待ったっ!徳永さんっ!」 小田は徳永の肩を押さえた。 「これ以上は無理ですっ!」 その時、二人の周りにざわざわと数人の男達が現れた。 映画に出て来そうな黒服の屈強なボディーガード。 見るからに怖そうな一団が目の前にいた。 「時空軸が歪んでいて向こうに行けないのですね?」 小田は腕組をして軽く笑った。 「また、お前かっ!」 その男達のひとりが言った。 「良く会いますね……この時代の人間に手を出し過ぎですよ」 「俺達は親族から依頼を受けてここに来た」 「私は公安局から依頼を受けてここにいます」 徳永はこの見知らぬ連中の会話が全然理解出来ずにポカンとしていた。 「あなた達は長丸くんを奪還しても捕まりますよ。怖い人がいますから……知ってますよね」 一瞬、男の顔色が変わった。 「お前らを殺ちまえば話が早い」 「短絡的だな……絶対捕まるって、どっちでも」 小田の言葉で男達がイラつきだした。
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