騒然

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「殺られる前にやりますよ。徳永さん」 「へっ?」 徳永は小田の顔色が変わった事が分かった。 「待って下さい」 「待って下さいと言っても待ってくれませんよ」 小田はいつの間にかメガネを外していた。 徳永は鞄を胸に抱えながらどうしていいか分からなく立ちつくした。 「喧嘩した……」 前から男が襲って来た。 「事が……」 その男の振り上げた拳をスルリと徳永は避けた。 「ないです」 右から来た男の足を引っ掛けて倒した。 「すみません…大丈夫ですか?」 徳永は心配そうに男を見た。 「謝ってどうする。徳永さん」 小田はひとりで2、3人を相手にしていた。 「自分の遺伝子を信じなさい」 「へぇ?」 徳永はその言葉にきょとんとしてしまった。 「そうか…お前でもいいのか?」 その男は徳永をじっと見た。 「小田は無視しろ。こっちの男だ。長丸と同じ遺伝子をもっている」 「ちょっと……まじ、何を言ってますか?あなた達は……」 男達は徳永目掛けて襲って来た。 徳永は男達に右腕と左腕を掴まれた。 「離して下さい。捕まる意味が分からない」 「静かにしろ…お前の元居た場所に還るだけだ」 「勝手な事を言っては困ります。僕は利さんを助けに来たんです」 小田が静かに徳永の正面にいる男に近づいた。 後ろから思い切り背中を蹴り倒した。 徳永は左手に持っていた鞄を左側の男の顔面に勢いよく当てた。 左手が空いた勢いで右側の男にも鞄をぶつけた。 後ろから来た男に腹目掛けて蹴りを入れた。 徳永の周りにひとり、ふたりと倒れて行く。 それは不思議な感覚だった。 危機が迫ると勝手に体が反応する。 小田の言う遺伝子のなせる業なのか…… 小田は後ろで何かを喋っている。 何を言っているのか聞き取れない。 徳永は最後のひとりを蹴り倒した。 大きく肩で息をひとつ吐いた。 小田は徳永の側に近寄った。 「直ぐに公安局がきます。その後に長丸くんと土井さんを探しましょう」 「これは遺伝子の……」 「違いますよ。きっと土井さんを助ける為に出た力じゃないですか?」 小田は意味深く笑った。 「医者がこれではまずいですよね……」 徳永は困った顔で髪を掻いた。 「確かに…」 小田は徳永の肩を叩いて、また笑った。
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