偶然

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今更、謝りに来られてもどうしてよいか土井も困っていた。 「もうさ…過ぎたことだから気にするな。俺も面倒だから…」 「そうですか……」 徳永が寂しそうな顔を見せた。 「また、合コンやろうとか言わないよね?」 「違います…」 徳永はテーブルに置かれたオムライスを食べ始めた。 「じゃあ、何?」 土井もハンバーグステーキを食べ始めた。 「……利さんが怒っているかな……、僻地に飛ばされて、また不貞寝して飯を食べてないかな…とか……考えたワケで」 「……僻地へ飛ばされた…」 徳永の言葉は土井が気にしている事を鋭く突いた。 「ちゃんと食べて下さい。内科医からの忠告です」 「お前のモテない理由が分かったよ」 「はい?」 「ひとこと多いんだよ」 土井は腹が立ってハンバーグステーキを口いっぱいに入れた。 「……怒ってますか?」 徳永に返す言葉はない。 土井は無言で飯をかき込んだ。 徳永の無神経さにイラついた。 鬱々した感情がまた沸き起こる。 だから、二人でファミレスに長居はしたくなかった。 一本タバコを吸って土井は席を立った。 「俺はこっち、駅は向こうだ。もう、会うこともないよ、徳永先生」 「あの……本当に…会わないのですか?」 「だって、俺、僻地だし…」 「すみません…怒って…ますよね」 土井に軽く睨まれた。 「取りあえず、また、連絡します」 徳永は軽く会釈をして駅に向かって歩き出した。 「取りあえずってなんだよ!」 その徳永の背中に腹が立つ。 後ろも振り返らず、土井は自分のアパートに帰って行った。
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