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「荷物がひとつ足らなかったんだよね。あのバカが持ってくるとは…」
土井はチラリと徳永の顔を伺った。
「中高って学校が一緒だったんだよ」
「ヤケに嬉しそうですね」
土井の近くへ立った。
「そうか……普通じゃねぇ」
その時、玄関のチャイムが鳴った。
土井が玄関に行こうと振り向く身体を徳永は捕まえた。
思い切り抱きしめて土井の唇を奪うとした。
「……やっ…」
土井が徳永を押し返そうとする。
その反動で徳永はリビングの重いドアに土井を押し当てた。
「……止めろよ…」
土井は徳永を睨み上げた。
「ふざけるのはここまでだ」
徳永はその言葉に怯みもしないで土井の唇に触れようとした。
その時、二回目のチャイムが鳴った。
徳永はリビング扉を軽く叩いて、土井から離れた。
土井は暫く肩で息を吐いて天井を見ていた。
「……出たらどうです。待ってますよ」
「分かって……」
言い終わらないうちに土井は廊下に飛び出した。
土井が玄関で何をしているか気になるが、徳永は取り敢えず知らないふりをした。
暫くするとリビングにまで笑い声が聞こえてきた。
徳永は気になった。
ただの後輩だ…気にするな……
ソファへ腰掛けて組んだ足が小刻みに床を鳴らした。
ダメだ……気になる…
徳永は何もなかったかのように澄まして玄関へ行った。
「こんにちは」
「何だよ」
土井はその言葉に身体がピクリと驚いた。
「お友達って伺ったのでご挨拶に来ました」
「ここに住んでいる方ですか?」
徳永は佐々木にへえーと言われ上から下までじっくりと見られた。
「やっぱ、違う。居候でも凄くないですか?先輩、どんな手使ったっすか?」
「どっ、どんな手って…」
土井の顔が赤くなった。
徳永はわざと土井の肩に手を置くと、またピクリと身体が動いた。
その反応が堪らなく面白い。
「昔、僕が利さんのアパートに転がり込んでいたので、今はその御礼です」
へえーと佐々木は感心していた。
「俺もこんな人と友達になりたい」
「止めとけ…」
土井は消えそうな声で答えた。
「俺、今日の配達終わりなんでラーメンでも食べに行きませんか?土井先輩」
「行くっ!」
土井は佐々木の肩を掴んで靴を履き玄関から出ようとした。
「待った……僕も一緒じゃ嫌かな」
土井が驚いた顔で徳永に振り向いた。
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