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「えーっ、是非一緒に」
佐々木は上機嫌で喜んだ。
「アホが……」
土井はあの徳永の行動が嫌だったので、一緒に居たくないと思った。
夕方になる頃、徳永と土井はマンションへ帰宅した。
少しビールを飲んだせいか気分が高揚していた。
徳永が玄関を開けて、土井を先に中へ入れた。
「久しぶりのラーメンも美味しですね」
土井が上目遣いに睨んでくる。
何か言いかけて部屋へ閉じ籠もろうとしていた。
「続きをしましょうよ」
「なっ?」
土井は驚いて真っ赤な顔になった。
「ビールですよ。いやらしい……」
「……」
土井は益々顔が赤くなった。
「ひとりで飲んでろっ!」
徳永は土井が部屋に入りかけた腕を掴みリビングに引きずり込んだ。
冷蔵庫から缶ビールを何本か取り出してつまみを探した。
「チーズとクラッカーしかないですけどいいですか?」
「……何でもいいよ、あんまり呑みたくないし」
土井はソファで不手腐れていた。
ラーメン屋での事で怒っているに違いないと徳永は思った、
佐々木はどうも徳永が気になるようでやたらと話かけてきた。
「へえ、徳永さん。お医者さんなんだ」
佐々木はニコニコしながら手酌の水を飲んだ。
「歳はいくつですか?」
「29です」
「そうなの。先輩と同じくらいかと思ってた。で、どうやって知り合いに?」
「利さんが入院してたんです。僕が研修医の時にね」
彼は黙々とラーメンを啜って、時々ビールを飲んだ。
「先輩、どうしたんですか?喋らないの気持ち悪いですよ」
「こいつに話を訊けば何でも答えてくれるよ」
「まあ、そうですけど。すぐ拗ねちゃうから」
「うるせえよ。お前は…」
手酌でビールを一気に飲み干した。
「昔はスッゴく陽気でお茶目だったすっけど、大学行ってから雰囲気が……やっぱ彼女に振られちゃったのが原因ですか?」
佐々木は彼の顔を覗き込んだ。
「誰の話しだっ!」
土井は佐々木の頭を叩いた。
「痛いでしょ。もう……」
徳永は土井のころころ変わる顔を見て笑ってしまう。
「徳永さん。高校の文化祭で先輩の笑える写メが広まったんです。あれが一番傑作だったな」
「へえ?どんな…」
徳永は土井に睨まれた。
「出し物がメイド喫茶で先輩のクラスは男子しかいなくてメイドさんは女装なんですよ。これが結構可愛くて」
徳永はあの古い写真を思い出した。
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