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「絶対連絡しますからね。」
佐々木は徳永に念を押した。
土井は何故か不機嫌だった。
徳永が一緒なのが気にいらないのだろう。
これがラーメン屋での出来事。
土井はソファに座り勝手に缶ビールを開けて飲んでいた。
徳永がソファに座ると土井は立ち上がりリビングから出て行った。
「利さん?」
廊下に置き去りになっていたダンボールを抱えて部屋へ入ろとしていた。
「開けますよ」
徳永は部屋のドアを開けた。
「ありがとう」
徳永は驚いて目を見開いた。
開けた部屋は意外にも綺麗に片付いていた。
最後のダンボールは写真やマンガなど小物類が入っているようだった。
「手伝いましょうか?」
「これは出さないからいい…このままで…」
ちらりとあの写真立てが見えた。
「リビングで待ってますね」
徳永は気持ちがイラつく前に部屋を出た。
リビングで缶ビールを開けて飲みだすと、昼間の彼の泣きそうな喪失感な顔が思い出された。
メガネを外しソファにもたれて天井を見上げた。
もう、三年近く傍へ居るのに時々どこか遠くを見ている……
このままで………いいのだろうか?
僕は傍にいたいけど………
彼は違う………
いつもあの男を探している……
求めるのはいつも僕………
彼は僕を否定し続ける。
リビングのドアが開いた。
土井は静かに対面側のソファに座る。
窓に東京の夜景がちらちらと映り出した。
飲みかけの缶ビールに手をかけた。
徳永はキッチンから灰皿を持ってきてテーブルの上に置いた。
「喫煙OKですよ」
「まだ、大丈夫」
土井は照れながら言う。
「少し減らそうかと思って……お前にいつも言われてるからさ……」
この言葉に弱いと徳永は思った。
彼の発する素直な言葉に弱い。
静か過ぎて徳永は中学生のようにドキドキしてしまう。
「テレビをつけますか?」
「どちらでも……」
土井は興味がなさそうに缶ビールを飲んでいた。
徳永は缶ビールをテーブルに置こうとして下の絨毯に落としてしまった。
「あっ!!」
メガネを外していたことを忘れていた。
「おいっ。何やってるの!」
土井は慌てて缶ビールを拾い上げて近くのティシュケースから紙を何枚も取り出し絨毯を掃除している。
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