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「お前さ……メガネ外すと必ずこれをやるよな……うちで何度やったんだよ」
土井は紙をゴミ箱に捨てながら言う。
「いい加減学習しろよ」
「利さん…」
徳永は土井を後ろから抱きしめた。
「で、必ずそうやる。甘えてもダメだ」
「ちょっとだけ………」
「お前はちょっとじゃないだろう。離れろ」
土井は徳永の絡めた腕を解こうとする。
徳永は寂しく腕の力を抜き土井を解放した。
「珍しい……」
土井は笑いながらそう言った。
「久しぶりに飯を作ってやろうか?土井ちゃんの腕はピカイチだよ」
「ええ、利さんをご馳走になります」
「利さん『に』だろう」
「真剣に『を』です」
「何でだよ。俺の作った飯が食えねえのか?」
「今は『を』でお願いします。」
土井はソファの角に当たりそこに立ち止まった。
「もう、放さないですからね」
土井の顔がにやりと笑らう。
徳永は一瞬止まってしまった。
その時、土井の指が徳永の頭の後ろを押さえ髪を撫でた。
そして、唇を甘く塞がれた。
「『を』でいいぞ」
離れた唇が囁く。
この衝撃に少し目眩がする。
徳永は彼の背中に腕を回した。
今までにない感触にもう、身体が熱い。
「……利さん……」
頬にキス。
彼を包むように抱きしめる。
徳永は背中に回した指先をTシャツの中へ滑り込ませ、彼の体温を感じたくてゆっくりと撫でた。
指先で熱を感じ取る。
徳永の肩に凭れている彼の小さな息遣いが聴こえる。
土井の耳へ唇が触れそうに徳永は囁く。
「……向こうへ行きますか?……」
土井が火照った顔を上げる。
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