プロローグ

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参った。本当に、参った。 目を離してはいけない、しっかりと面倒を見ろ、と散々言われてきたというのに。 今朝だってあの子をよろしく頼むと直々に言われたというのに、これじゃあもう外に出れやしないじゃないかきっと。 今にも倒れ込みそうな程の眩暈を覚えながらも、頼まれたあの子がいそうな場所を探しては、その場所に姿が無いと分かると、頭の中に浮かんだ次の場所に疲れを感じている足を引きずりそうになりながらも懸命に動かした。 そうして次の場所に辿り着いてもそこで姿を無いのを認めると、とうとう頭を垂れてしまう。 ああ、本当にどこに行ってしまったのか。 広い建物に敷地だというのに、もうほとんどの場所を探した。 もしかして入れ違いになってしまったか、なんて、疲れをどっと感じずにはおれない不安を浮かべては、あとどこを探してないかと思考をゆるゆる動かして。 王座の間は、却下だ。 王座が一体何なのかと深い疑問を幼いながらに抱いているあの子が好き好んであの場所に行くわけがない。 では兵士達の鍛錬の場は、これも却下。 幼いながらに鍛錬を見るのを好んでいるあの子には大好きな部類に入る場所だけど、大事な時期を迎えて緊張の高まっている兵士の意識の邪魔をするのは無粋だと、重々承知していたから。 では他には、と思考を働かせた時、それ以外の場所はもう探し尽くしたと溜め息を吐き頭を抱えてしまったが、そういえばあの場所にまだ行っていないと、思い出した。 過去を知るには大事な場所だというのに、どうしてか誰も近寄らなくなってしまった忘れ去られそうになっているあの場所。 端の塔に設置された、図書室、を。  
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