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「首をここに差し出せないのが非常に残念ではありますが、首を落とす前に竜が現れまして。あれごと団は竜に食い潰されました」
嘘は言っていない。
竜は非情で残虐で、同族以外をただの餌としか捉えていない絶対的捕食者だ。
竜の前にいた者達は尾の一振りで体を砕かれてしまい、そして逃げ足掻いていたあれだって無事では絶対に済まないだろう。
きっと竜はあれの体を噛み砕き咀嚼した筈だと。
そうしてあれの存在がどうなったかを知るのは逃げ延びた一握りの人間だけで、その者達が口をそろえてそう言えば、それが真になる。
だからカワードは
「あれは確かに竜に食われました」
と、真っ直ぐと言い放った。
確かめるように己を射抜く視線がすぐさま降り注いできて嘘か真実かを見抜こうとされていると感じては嫌な汗が背中に一筋垂れたが、己の命の為にもカワードは必死に視線を受け止めた。
しばらく耐えれば男の視線は緩み銀の髪に映ると、恐ろしいまでの美しい笑みが唇を彩って。
「ならば私を脅かす者はもういないね。それを見せ示せば私を新たな主を認識せざるを得ないだろう、民草は」
くつりくつり。
喉を鳴らして笑う男は危険を双眸に孕ませて、一つの国を手中に落としたことを歓喜する。
王座に優雅に腰を掛けては足を組んでいる男は自らの望み通りの事が進んでいるのを愉快そうにしているが、カワードは戦慄にも取れる微かな震えを感じてしまい、男から目を逸らした。
竜も人からしたら化け物だが、男が跨っている化け物は竜のように形を成しているわけではない見えない途方もない国という名の化け物で、その化け物を上手く操ろうとしては、上手く操る術を身に付けているからこそ、竜よりも恐ろしいのではと今更のように思った。
己の主で味方だからこそ冷静にそう思えるのだろうが、己の口から吐いた嘘のようで真実で、真実のようで嘘を見破られた時敵に回ってしまうかもしれないと危惧すると、体が震えだそうとする。
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