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「あの騎士があれの側にいなかったってことは、あれを見限ったんじゃないか。自身の命を賭してまで誰かを守る輩には見えんなかったぞ。……なのにその騎士を探しだすなんぞ」
何かをする為に身を隠している、というなら幾らでも探しようがあるが、騎士の役割をきっと放棄したであろう目的の無くなった者を探し出すには結構な時間を労力を費やしてしまうこと確実で。
カワードは、騎士が絶対に騎士としての肩書を捨てて自由気ままに生きだしたのだと思い込んでしまっていたから、探し出す方法を見つけ出せずにいた。
しかしいつまでもうんうんと唸っては動かずにおれば、何をしているのだと思われ下手したら命を獲られるかもしれないと分かっているから、自然と溜め息が漏れてしまう。
「俺も一応怪我人なんだがな」
竜から受けた傷ではないから深手ではないものの、それでも体を動かせば痛みは走るというもの。
自嘲を浅く浮かべたカワードは、服越しに怪我を撫でて小さく走る痛みに目元を僅かに歪めると、息を吐き出しながら目を閉じた。
また任務が与えられて働かないといけないのだ。
ならば今少しだけは休んでもいいだろう。
もう何ヶ月もゆっくりと休んでないのだから、少しでも休息を求めて、意識は直ぐに闇の中にと沈んでしまった。
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