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頭上に広がる空間の中央には空間を明るく照らす為の天窓のようなものが一つ付いていて、そこから暗闇に慣れていしまった目には痛い明るい光が惜しげもなく落ちてきている。
光を遮り目を守る為にかざした手。
そこを見つめながらそろそろ光に慣れた頃だろうと手を引けば、思わず歓声が唇の合間から漏れた。
凄い。
その一言だった。
高く広い空間には上へと伸びている高い棚が幾つも乱雑に並んでいて、本棚達に見下ろされているような感覚に陥ってしまうような威圧感があって。
きっと何年も何年も、誰も足を踏み入れてないだろうというのに、確かな存在感を露わにしている本棚に並べられた本達。
誘われるように足を進めれば、天窓のようなものから降り注ぐ光を真っ向から浴びないようにとだけ考えられ位置付けされている本棚の前に立ち、様々厚さ、様々な色をした本の背に視線を巡らせた。
どれも知っている本のタイトル。
どれも知らない本のタイトル。
不思議な感覚に陥りそうになる本達の背に、触れていいものなのかと恐る恐る微かに震える指を伸ばしてはそっと触れた。
途端。
「ねえ、あれ取って。あれが読みたいの」
鈴の転がるような声が、響いた。
突然の声に驚いてしまって、体が跳ねてしまった。
何か心霊的なものだとかお伽噺に出てきそうな存在とかがいてもおかしくない雰囲気を今いる空間は漂わせているが、そういえが自分は人を探してここに来たのだと慌てて思い出した。
声の主を見つける為にきょろきょろと頭を動かせば、焦って探さなくても済む近い位置に声の主はいたではないか。
「早くあれ取って」
そう。目の前に。
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