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幸せだと、そう感じる。
そう……感じれる。
賑やかさに包まれていて、賑やかさを生む心優しい人達が己を囲んでくれていて、これが幸せではないというのなら何というのか、教えてほしい。
綿毛のような茶に近い金の豊かな髪を結わずに白色のドレスを纏った背中に流し、空の欠片のような澄んだ碧眼の持ち主であるアニエスは、くすくす小さく笑いながら、つい先程完成させたものに目を落とした。
花畑を彩っていた花を摘んでは編んだそれ。
父はきっとここに来るから、仕事を頑張った父を少しでも労い癒したくて、丁寧に丁寧に編んでいたそれ。
己の膝の上に置いていたそれをゆっくりと持ち上げると、ふわりと、短い銀の髪の上に置いた。
「アニエス……。これは一生ものの宝ですぞぉぉぉ!!」
「大袈裟ですよ、お父様。花の命は短いのですからね? でも、宝と言われて花達はきっと喜びます」
父の頭を可憐に飾ったのは、アニエスが丁寧に丁寧に編んだ、花冠。
見事といえる程の立派な花冠を頭に乗せられた父は嬉しさに感極まっており、騎士は冴え冴えとした表情に拍車をかけ、体の細い男は眼鏡の奥に苦笑を浮かべる。
「はい。これはユダの分よ」
「自分の……ですか?」
アニエスが編んでいた花冠は、五つ。
花冠一つ一つを誰かに配り、計五人の人物の頭の上を飾るのだろうとは思っていたが、一つがまさか自分の分だと思っていなかったのだろう。
アニエスの護衛を任された騎士である冴え冴えとした表情を常に浮かべているユダは、一重の目を小さな驚きで瞬かせた。
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