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古い古い、幾年もの年月を感じていたかのような古さを伝えてくる、深い緑色は掠れていて。
本の背に本の題名は書かれていなかったが、背に書かれていなくとも本の平の部分には書かれているだろうと思ったが、どうやらそこにも何も無くただ掠れた緑色が広がっているだけ。
これは一体何の本だろうか?
そう疑問を抱きながらその子の背後に立つと、興味心に負けてその子の背から顔を覗かせ本を見下ろした。
題名はおろか、著者名も書かれていないぶ厚くも古い一冊のその本。
よくもまぁそんな本をこの沢山ある本棚と本の量の合間から見つけたものだと、それにもう何年も誰も足を踏み入れてないだろう図書室を見つけ出したものだと、感心していれば、小さな手のひらが本の平を撫でた。
慈しむように、それでいてこの本を開くことを許してくれと許しを乞うように、ゆっくりと一撫でした小さな手。
平の縁に指先を引っ掛ければ、ゆっくりと平を捲った。
その時に中の紙が貼りついていたらしくぺりりと細かな音が静かな図書室の埃っぽい大気を僅かに揺らして、そうして露わになったのはようやくその本に見つることのできた、字。
目次が、年月を感じさせない程鮮やかに、黒のインクで書き流れていたのだ。
やっと本にあるべき文字があったと小さな安堵を感じては肩から力を抜けば、一向に次のページが捲られない。
怪訝に思っていれば、下から視線を感じ見れば翡翠色がじっとこちらを見上げてきているではないか。
「読めない。読んで」
どうしました、と聞くよりも早く、抑揚の無い声が強請る。
ああ、そういえばこの子は難しい文字はまだ一人で読めないのだったと思い出してはおかしそうに一つ笑い、許可を得てその子の隣の椅子に腰を下ろした。
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